これまでの技能実習制度は、日本での技能等の修得を通じた人材育成により、国際貢献を行うことを目的とする制度でした。
今回の法改正で新たに創設された育成就労制度は、日本での人手不足分野における人材育成と人材確保を目的とする制度として異なった目的で作られています。
育成就労制度の目的
育成就労外国人を受け入れることができる実施機関は「育成就労産業分野」と呼ばれる育成就労制度の受け入れ分野で定められた事業を行っている企業でなければなりません。
この育成就労産業分野は特定技能制度の受け入れ分野である特定産業分野のうち就労を通じて技能を修得させることが相当なものと決められています。
日本で3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、その分野で人材を確保することを目的として創設されました。
受け入れ人数
制度の運用に向けて、育成就労制度の基本方針と分野ごとの分野別運用方針が策定されます。
その分野別運用方針により、生産性向上及び国内人材確保を行ってもなお不足する人数に基づき分野ごとに受入見込み数が設定され、これ受入れの上限数としていく定めることとなっています。
育成就労計画の認定
育成就労外国人として雇い入れる方ごとに「育成就労計画」というものを作成します。
この育成就労計画には育成就労の期間(3年以内)、育成就労の目的、内容等が記載されます。
この育成就労計画は、新たに設置される外国人育成就労機構による認定を受ける必要があります。
監理支援機関
技能実習制度における監理団体に代わる機関として、監理支援機関を許可制として設けることになりました。
この監理支援機関は育成就労外国人と育成就労実施者(企業)との間での雇用関係の成立のあっせん、いくっせ就労が適正に実施されているかどうかの監理を行うなどの役割を担います。
監理支援機関を許可制を取りますが、許可の基準は厳格化され、技能実習制度における監理団体も監理支援機関の許可を受けないと監理支援事業を行うことはできません。
転籍について
技能実習制度では、基本的に転籍が認められていませんでした。
そのため、実習先と合わないなどの事情が発生した場合に起こる失踪が問題視されてきました。
育成就労では転籍を緩和する動きへと変わり、労働者としての権利保護を適切に図る方針へと変更されました。
やむを得ない事情がある場合に転籍を認めるよう範囲を拡大し、手続きが柔軟化されました。
本人の意向により転籍も認められることとなります。
しかし、本人の意向による転籍は以下の要件が定められる予定です。
- やむを得ない事情があること
- 同一機関での就労期間が1~2年を超えている。(就労期間については分野により異なる)
- 技能検定試験基礎級等の合格
- 日本語能力に係る試験の合格(A1~A2相当)
- 転籍先が、育成就労を適正に実施する基準を満たしていること
- 同一業務区分であること
また、転籍先において新たに育成就労計画の認定を受ける必要があります。
育成就労制度は令和6年6月21日から起算して3年以内の政令で定める日に施行される予定です。